正直に言うと、私は転職するたびに、最初の数日はいつも同じ壁にぶつかります。
前の職場で、それなりに裁量のある仕事を任されていた人ほど、このギャップは大きく感じるはずです。転職して数日、任されるのはひたすら地味な、単純作業。
「もしかして、自分はこんな作業をするために転職したんだっけ」——そんな考えが、ふと頭をよぎる瞬間があります。
でも、これは仕方のないことだと、今の私は思っています。
なぜ、最初は単純作業ばかりなのか
考えてみれば当然の話です。
周囲は、まだあなたが何者かを知りません。
どんなに前職で実績があっても、それはあくまで前の会社での話。今の職場では、まだ何ひとつ証明できていない状態です。
そんな相手に、いきなり大きな仕事を任せられるでしょうか。
自分が逆の立場だったら、きっと同じことをすると思います。責任感が強い人ほど、そうするはずです。
だからこそ、最初は基本的な仕事から。どんなに地味な作業でも、まずはそこから見られています。
たった一つの単純作業から、信頼が生まれた話
新卒で入った会社の、設計に関わる部署にいた頃の話です。
当時、大きな紙の図面を電子データに変える仕事がありました。普通の書類ならスキャナーで済みますが、対象は横1.5m、縦1mを超えるような、特大サイズの図面です。
専用の大型スキャナーに、用紙をまっすぐ、決められたラインに沿って流し込む必要がありました。少しでもずれると、画像が曲がったり、端が切れてしまう。しかも一度機械に吸い込まれたら、途中で止めることはできません。
新人には、特に説明もなく「とりあえずこれやってみて」とだけ言われて、いきなり作業を任されました。先輩たちの間では、「なかなか任せられる人がいない」と言われるほど、コツを掴むのが難しい作業だったそうです。
不思議なことに、私は数時間でかなり綺麗にスキャニングできるようになりました。明確な根拠があったわけではなく、正直、ただの偶然に近いものでした。
それでも、周囲からは驚かれ、ちょっとした噂になりました。
褒められたときの、たった一言の選び方
ここで、当時の私は一つ、失敗をしました。
休憩中のランチで、先輩の一人が「すごいね、できてるね」と声をかけてきたとき、私はつい嬉しくなって、こう返してしまったんです。
「いや、全然余裕ですよ」
その先輩たちはうまく受け流してくれましたが、隣にいた別の一人が、嫌味っぽくボソッとこう言いました。
「あんまり余裕とか言わない方がいいですよ」
それから、その人はずっと私がミスをする瞬間を監視するようになり、小さな失敗を見つけては、逐一上司に報告するようになりました。
こういう人は、正直どの職場にもいます。
でも、そこで消耗するより、目の前の仕事に集中する方がいい。今振り返れば、あのときの一言を、もう少し丁寧に選べていたら良かったと思います。
あの一言で失ったのは、発言の重みそのものより、少しの間、周りからの信頼だったのだと思います。
今の私なら、こう答えていたと思います。
「ありがとうございます。まだコツは全然分かっていないんですけど、うまくいって良かったです。これからも担当させてもらえるので、再現性が上がるようにポイントを押さえて、皆さんのお役に立てるよう頑張ります」
同じ結果でも、言葉の選び方ひとつで、周囲の受け取り方はまったく変わります。
「今はたまたまうまくいっただけ」という謙虚さと、「これからも役に立ちたい」という前向きさ。それだけで、余計な妬みを生まずに済んだはずです。
まずは、目の前の一つを丁寧に
単純作業には、二つの意味があると思っています。
一つは、あなたがどんな人か、周囲が見極めるための時間であること。
もう一つは、丁寧にやり遂げれば、そこから信頼が生まれるということです。
前職での経験は、いったん脇に置いていい。
まずは目の前の一つを、丁寧に。そして、うまくいったときこそ、言葉を選ぶこと。
そこから、少しずつ次の仕事が任されていきます🍀

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